知財検定(2級)は働きながら合格できる?
こんにちは、弁理士・薬剤師の岩崎です。
この記事では・・・
知財(=知的財産)に関係する資格である「知財検定(=知的財産管理技能検定)2級」に興味を持っていて、どのくらいの勉強時間が必要なのか?果たして働きながら取り組むことが可能なのか?そんな疑問をお持ちの方に向けて、様々な情報を紹介しています。
※「知的財産管理技能検定」は一般財団法人知的財産研究教育財団の登録商標です
■ 知的財産管理技能検定2級の詳細については公式ウェブサイトをご覧ください
公式ウェブサイト:国家試験 知的財産管理技能検定 トップ (kentei-info-ip-edu.org)
■ 資格スクール・対策予備校のウェブサイトや書籍の情報も参考になります
1. 知財検定(2級)の試験情報 総まとめ!
「知財検定(=知的財産管理技能検定)」は、知財(=知的財産)管理に特化した技能検定の一種で、知的財産を管理(マネジメント)するスキルの習得レベルを測定・評価するものです。そのうち、2級は、知財検定の真ん中に位置する等級で、合格することで“二級知的財産管理技能士(管理業務)”を名乗ることができます。知財マネジメントの基本的なスキルが習得できているかを測定・評価する試験です。知財管理の基本的な能力を身に着けた方として、企業の知的財産部や開発部などに配属されて3年目から5年目程度のいわゆる中堅クラスの方々に適した試験と考えられます。
このような知財検定2級ですが、受検を考える多くの方は働きながら取り組む方が多いでしょう。勉強時間がどのくらいかかるのか?果たして働きながら合格できるのか?この記事の情報を参考に、ご自身の働き方を踏まえて、取り組みやすいかどうかをぜひ考えてみてください。それでは、紹介していきましょう。
■受検資格
まずは、受検資格についてです。知財検定2級は、受検資格に一定の制限があります。原則として、「知的財産管理」の職種での実務経験や知財検定3級に合格するなどが必要となります。
✔ 知的財産に関する業務について2年以上の実務経験を有する者✔ 3級技能検定の合格者✔ 学校教育法による大学又は大学院において検定職種に関する科目について10単位以上を習得した者✔ ビジネス著作権検定の合格者 |
なお、実務経験については自己申告制です。したがって所属している企業などから実際に従事した期間を証明する証明書などを発行してもらう必要はありません。このことから実務経験の年数はおおよその目安としてとらえてもよさそうです。
■試験内容
知財検定2級は、学科試験と実技試験があり、主に管理業務(マネジメント業務)に重きを置いている試験です。各試験の詳細は次の表のようになっています。
方式 | 問題数 | 時間 | |
学科 | マークシート | 40問 | 60分 |
実技 | 記述・マークシート | 40問 | 60分 |
■試験範囲
試験範囲としては次の表のようになっています。
試験項目 | 出題される法律・関連する知識 |
ブランド保護 | 商標法、不正競争防止法 |
技術保護 | 特許法、実用新案法、種苗法 |
コンテンツ保護 | 著作権法 |
デザイン保護 | 意匠法 |
契約 | 民法、独占禁止法 |
エンフォースメント | 権利侵害に対する対応 |
関連法規 | 弁理士法・関税法 |
戦略・法務・リスクマネジメント・調査 | 各項目に関連する法律 |
この表をご覧いただくと非常に広範な試験範囲だと感じるかもしれませんが、どの項目も同じ割合で出題されるわけではありません。したがって、どの法律、知識もまんべんなく習得する必要はないものの、それでも試験勉強では、公式の対策テキストを何度も読んで、基本部分を理解しておく必要があるでしょう。
各法律の概念や実務対応能力のロジックを根本から理解するためには、過去問などの問題演習を繰り返して検定試験に対応する力を身に付ける作業が不可欠です。
■合格基準
学科試験・実技試験ともに、合格率は満点の80%以上とされています。
■試験日程
試験は、年に3回(3月、7月、11月)実施されています。
各回に申込期限が設定されますので、見逃さないように公式ウェブサイトを定期的にチェックすることをお勧めします。
直近では第48回試験が2024年7月に開催されますが、すでに試験申し込みは6月12日で締め切られています。これから挑戦しようとする方は、その次の第49回試験(2024年11月開催予定)を目標にしてみてください。
■合格率
学科試験の合格率は概ね45%程度です。また、実技試験の合格率は概ね40%程度です。どちらも半分を下回る合格率ですので、決して甘く見てはいけない難易度といえそうです。
参考までに、直近1年(過去3回分)の合格率を下表に示します。
【学科試験】
回数 | 申込者数 | 合格者数 | 合格率 |
第47回(2024年3月) | 2,468 | 1,384 | 56.1 |
第46回(2023年11月) | 2,050 | 626 | 30.5 |
第45回(2023年7月) | 1,941 | 904 | 46.6 |
【実技試験】
回数 | 申込者数 | 合格者数 | 合格率 |
第47回(2024年3月) | 2,234 | 759 | 33.9 |
第46回(2023年11月) | 2,189 | 1,148 | 52.4 |
第45回(2023年7月) | 1,953 | 790 | 40.5 |
※出典:国家試験 知的財産管理技能検定 実施データ (kentei-info-ip-edu.org)
■受検料金
検定試験ですので、当然ながら無料で取り組むことはできません。また、受検申込をしたあと、下記の検定料を支払うことで、専用ウェブサイトで受検申込が完了したことを確認できます。せっかく勉強したのに受検料金を支払い忘れることがないように気を付けましょう。
学科試験:8,200円(非課税)
実技試験:8,200円(非課税)
2.知財検定(2級)の勉強時間や勉強方法
2-1. 合格に必要な勉強時間
知財検定2級の勉強時間は、約50時間程度といわれています。これは知財検定を全く受検したことがない方が、知財検定2級に挑戦した場合の勉強時間の目安となるでしょう。もしすでに知財検定3級に合格されている方であれば、初歩的な知財管理能力をお持ちですので、約20~40時間程度に短縮可能でしょう。
もし1日2時間の勉強時間を確保できた場合、日数にして25日(約1か月)かかる計算になりますので、計画的に勉強時間をマネジメントする能力も必要になりそうです。
2-2. タイプに合わせた効率的な勉強方法
主な勉強方法は「①テキストを読む」、「②過去問を解く」の2パターンです。
もしあなたが全くの初学者だとか、法律用語にハードルを感じるタイプでしたら、まずは「①テキストを読む」ことでインプットを重点的に取り組むことをお勧めします。ここで重要なのは、内容をひとつひとつを理解するのではなく、全体を俯瞰し、概要や用語の意味を覚えていくことです。そのあと、ある程度慣れてきたら「②過去問を解く」にシフトしていくことが望ましいです。
反対に、もしあなたが、実務経験が豊富な方でしたり、知財検定3級をすでに勉強又は合格されているようなら「②過去問を解く」からスタートするのが効率的でしょう。知財検定2級用の知識のインプットはもちろん重要になりますが、3級と重複する試験範囲もあるため、インプットから入るとモチベーションの低下にもつながりかねません。目指すゴールは検定試験合格ですので、本番を見据えて、しっかりとアウトプットに慣れておく必要があります。
また、過去問は最低2~3周は解き終わることを目標にしてください。過去問を解く際に意識していただきたいことは、次のようにいくつかあります。
■苦手分野を洗い出す
自分の苦手分野を洗い出して、重点的に取り組むことで苦手分野の対策を図りましょう。苦手を埋めるコツは何度も取り組んで慣れることです。
■正しく修正できるようになる
正しい選択肢だけではなく、誤りの選択肢については「どこを修正すると正しい文章になるのか?」を意識して取り組むと、きっと知識の定着が加速します。
■出題傾向をつかむ
知財検定2級の試験範囲は、実は知財検定3級と重複しています。また、その中でもすべての試験範囲が均等にまんべんなく出題されるわけではありません。複数回分の過去問を解くことで、直近の出題傾向をつかみ、どこに重点的に力を入れて取り組むべきか、探してみるとよいでしょう。
3.合格後のメリット
3-1. 知財検定2級が活かせる仕事
知財検定2級に合格すると「二級知財管理技能士(管理業務)」を名乗ることができます。そして、上述した広い試験範囲の中で、きっとあなたが得意とする分野やより興味を持てる分野がきっとみつかるでしょう。それを仕事に活かせると、知財検定2級の合格に向けて費やした勉強時間がきっと有意義なものになることでしょう。例えば、コンテンツ関連業務、企業の知財部又は法務部、特許事務所など様々な仕事が考えられます。
3-2. キャリアアップしやすい
知財検定2級を持っているということは「知財管理能力として基本的な知識・技能を有している」と客観的に証明することができます。有資格者の強みを活かして、転職活動に取り組んだり、新たな資格試験の基盤固めに活用したり、様々なキャリアアップが可能になるかもしれません。
3-3. 知財管理技能士会に所属する
知財検定に合格すると「知的財産管理技能士会(=知財技能士会)」に参加することができます。知財技能士会への参加は合格者に必須のことではありませんが、知財技能士会では、知財技能士の有資格者のために継続的な学習の機会や情報提供を行っており、キャリアアップや実務的なスキルアップにつながる会員サービスを提供しています。
詳しくは、知財技能士会の公式ウェブサイトをご確認ください。
公式ウェブサイト:知的財産管理技能士会 トップ (ip-ginoushikai.org)
4.まとめ
知財検定2級の勉強時間を中心に、試験情報や効率的な勉強方法を紹介してきました。「知財管理の基本的なスキルを有する証明」といわれる知財検定2級ですが、“基本的なスキル”とあるものの、合格することは決して楽な試験ではありません。勉強時間をしっかりと確保して、万全の準備を整えてから試験本番に臨んでください。