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知財関係の資格をあれこれ解説!

岩崎 禎 某製薬企業 企業内弁理士 薬剤師 (株)NATAコーポレーション知的財産部長
知財関係の資格をあれこれ解説!

こんにちは、弁理士・薬剤師の岩崎です。

この記事では…

知財(=知的財産)に関係した資格に興味を持っていて、これからお仕事として携わろうとする方、キャリアアップ・ステップアップを検討中の方に向けて資格の種類や概要をを提解説しています。

■ 各資格の詳細については運営団体や認定団体のウェブサイトをご覧ください

■ 資格スクール・対策予備校のウェブサイトや書籍の情報も参考になります

1. 知的財産にまつわる資格といえば?

 知的財産(知財)と聞くとなんだろう?と思われる方もいるかもしれませんが、特許・商標・著作権と聞くとどうでしょうか?みなさん、一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。これらの総称が知的財産(略して「知財」)です。

 この知財にまつわる資格と一言でいっても、国家資格や民間資格もあれば、知的財産全般に関する資格から特定の専門分野に特化した資格まで様々です。それぞれどのような資格があるのかみていきましょう!

1-1. 資格の種類でわけてみる(国家資格/民間資格)

 知財にまつわる資格を、国家資格か民間資格かの種類でわけてみましょう。

国家資格弁理士
知的財産管理技能検定
民間資格知的財産翻訳検定
AIPE認定知的財産アナリスト
ビジネス著作権検定
調査業務実施者

 「弁理士」、「知的財産管理技能検定」は国家資格です。国家試験を受験し、突破することで資格を取得できます。

 一方で、「知的財産翻訳検定」、「AIPE認定知的財産アナリスト」、「ビジネス著作権検定」、「調査業務実施者」等は民間団体から発行される民間資格です。認定試験を受験したり、指定された講習等を終了することで資格を取得できます。

1-2. 取り扱う領域/分野でわけてみる

 次に、知財に関する資格を別の観点で分けてみます。

 ここでは、2つの軸を考えてみましょう。ひとつは、スペシャリスト(専門的な知識・経験を有する者)かジェネラリスト(広範な知識・経験を有する者)かという軸です。そして、もうひとつは実務家向けの資格かマネジメント向けの資格かという軸です。

※下図は筆者の個人的見解による分類です

    まず、「弁理士」は非常に広範な領域を取り扱います。また、資格がないと取り扱えない業務(専権業務)がありますので、ジェネラリストかつ実務家向けの資格といえるでしょう。もちろん弁理士の方々にも個々の専門分野がありますので、特定の分野に関してはスペシャリストといえる資格でもあります。    

 次に「知的財産翻訳検定」、「調査業務実施者」、「ビジネス著作権検定」は、その名に冠する通り特許明細書等の翻訳、調査、著作権といった専門的な分野を扱う実務者向けの資格です。いずれもスペシャリスト的な知識や技術が要求されますが、調査業務は広範な技術分野がありますので、上図だとやや左側に位置しています。そして、「AIPE認定知的財産アナリスト」や「知的財産管理技能検定」は、その分野や等級にもよりますが、広範かつ専門的な知識・経験を問う資格でどちらかというとマネジメント向けといえるでしょう。

2. 各資格の概要の解説①

2-1. 弁理士

 弁理士は、特許・実用新案・意匠・商標といった知的財産の総合的な専門家です。主な業務として、各種の知的財産権を取得したい顧客の代わりに特許庁に対する手続き等を代理するという専権業務を行います。

 弁理士になるためには、特許庁が実施する弁理士試験に合格する必要があります。弁理士試験は年に1回実施され、短答式筆記試験・論文式筆記試験・口述式試験の3段階から構成されています。受験自体に制限はなく誰でも受験できますが、非常に多岐にわたる知識や迅速な判断力、論理的思考能力など様々な技能が求められます。

2-2. 知的財産管理技能検定

 知的財産管理技能検定はもとは民間資格でしたが、2008年7月から国家資格になっています。主な業務は、企業などにおける知的財産管理で、実務に即した幅広い知識が必要となります。より具体的には、知的財産の価値評価や知的財産戦略の立案、ライセンス契約や営業秘密管理、知的財産全般に関する手続き管理等です。弁理士との最も大きな違いは、特許庁に対する専権業務がないことです。

 資格を取得するには、知的財産教育協会が実施する検定試験に合格する必要があります。3級は特段の受験資格はありませんが、2級以上は一定の受験資格が必要です。2級以上は企業の知的財産マネジメントにかかわる方、3級は入門編として、異動などで知的財産部に新たに配属になった方が取り組むことが多いです。

2-3. AIPE認定知的財産アナリスト

 AIPE認定知的財産アナリストは、自社および業界全体の特許等の出願状況を分析することにより、自社の経営戦略に知的財産を十分に活用するためのプロフェッショナルな資格です。知的財産に関する知識だけでなく、ファイナンスなど経営に関する知識にも長けている必要があり、非常に専門的な資格といえます。

 資格を取得するには、知的財産教育協会が実施する講座を受講し、認定試験を修了する必要があります。専門分野によって「知的財産アナリスト(特許)」と「知的財産アナリスト(コンテンツ)」の2種類があります。

3. 各資格の概要の解説②

3-1. 知的財産翻訳検定

 知的財産翻訳検定は、特許明細書等の書類を翻訳する能力を客観的に測定するための民間資格です。知的財産にかかわる書類には専門的な技術用語も多く、通常の翻訳能力だけではなく、特許特有の言語表現だったり、国際的な法律などにも精通することができます。

 資格を取得するには、日本知的財産翻訳協会が実施する検定試験に合格する必要があります。検定試験は、和文英訳・英文和訳に関しては1級から3級まであり、そのほかに中文和訳、独文和訳の試験も選択可能です。

3-2. ビジネス著作権検定

 ビジネス著作権検定は、知的財産の中でも著作権の分野に特化した民間資格です。ビジネス実務、日常生活において必要とされる著作権に関する知識および関連する知識について、その基礎的な理解、具体的な裁判例・ビジネス実務における慣例を基準とする事例判断での応用力を問われます。 

 資格を取得するには、サーティファイ著作権検定委員会が実施する検定試験に合格する必要があります。検定試験はBASIC、初級、上級の3種類があります。

3-3. 調査業務実施者

 調査業務実施者は、特許先行技術調査員またはサーチャーとも呼ばれます。毎年多くの特許出願が出されるため、先行技術調査は膨大な数となります。サーチャーは、特許が出願された際に、特許庁と連携して先行技術文献の調査を行います。

 資格を取得するには、特許庁の提携先の調査機関に所属し、かつ調査業務実施者育成研修を受講する必要があります。研修中に4回の試験が行われ、すべてに合格するとサーチャーとして働くことができます。

4. 番外編

4-1. 知的財産関係の資格取得に有用な資格

 様々な資格について解説してきましたが、どのような印象を受けたでしょうか。解説した資格は難易度も様々ですが、中にはこれらの資格を取得するために他の資格が有用な場合もあります。

 具体的には、資格認定のために必須のものだったり、受験資格を保有しているとみなされたり、一部の試験について免除をうけたりすることができます。これらの資格を有すると、知的財産関係の資格取得に取り組みやすくなるかもしれません。

対象となる資格取得のために有用な資格効果
弁理士✔ 修士・博士等の学位✔ 他の公的資格(一級建築士、薬剤師、司法書士、行政書士など)論文式筆記試験(選択科目)の免除
一級知的財産管理技能士他の専門の一級知的財産管理技能士資格学科試験の免除
知的財産管理技能士(一級・二級)ビジネス著作権検定(上級)受験資格を有するとみなされる
知的財産アナリスト(特許)弁理士、弁護士、技術士、中小企業診断士、証券アナリスト、公認会計士など認定を受けるために必要

4-2. そのほかの資格との相乗効果

 他の公的な資格を有することでダブルライセンスを生かした活躍が考えられます。以下は弁理士資格を有する方がダブルライセンスとして保有することで相乗効果が見込まれる資格の一例です。

1.行政書士

 行政書士は、官公署に提出する書類の作成や契約書といった、権利義務・事実証明に関する書類作成を行う専門職です。弁理士資格を有する方は、行政書士試験を受験しなくても、資格取得が可能です。

 弁理士として知的財産権の出願を行い、行政書士の立場から会社の設立手続きの書類を作成という具合に仕事の領域が広がる可能性もあります。

 2.税理士

 税理士は、顧客の代わりに確定申告や青色申告といった税務を代理する専門職です。税理士資格を有する方は、企業の財務のエキスパートですので、財務を踏まえた知的財産コンサルタントとして活躍できるかもしれません。また、2つの専門知識を活かしてAIPE認定知的財産アナリストを目指すこともありえます。

 3.中小企業診断士

 中小企業診断士は、企業の経営を診断し経営戦略についてアドバイスを行う経営コンサルタントの国家資格です。弁理士資格と中小企業診断士資格を有する方は、依頼者の知的財産権と企業の経営戦略に基づいた提案を行えます。

5. まとめ

 知的財産関係の資格の種類とその概要を、また、他の資格との相乗効果を期待できる資格についてその一例を解説してきました。知的財産にかかわる資格を有することは、ご自身の知的財産に関する知識や経験を客観的に証明する手段として活用できるうえ、転職などを検討する際に非常に有用な可能性があります。

 この記事の情報が、知的財産に関するお仕事に携わりたい方、ステップアップしたい方、キャリアチェンジしたい方の参考になれば、ありがたく思います。

岩崎 禎 某製薬企業 企業内弁理士 薬剤師 (株)NATAコーポレーション知的財産部長 製薬企業での研究者時代に知財に出会い、その後どっぷり知財の道へ。医薬・医療機器・医療用アプリ分野を中心に、企業内弁理士の観点で特許・商標と幅広く従事。また、様々な社内知財研修で講師を長年務める。2024年より(株)NATAコーポレーションの知的財産部長を拝命し、フレンドリーCROシステムを活用した創薬支援事業の知的財産コンサルティングにも携わる。
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