【知財検定】知的財産管理技能検定はどんな資格?
こんにちは、弁理士・薬剤師の岩崎です。
この記事では・・・
知的財産に関係する資格の一つである「知的財産管理技能検定(=知財検定)」に興味を持っていて、これから資格取得を考えている方、キャリアアップ・ステップアップを検討中の方に向けて検定試験の概要や最新トピックスを紹介しています。
※「知的財産管理技能検定」は一般財団法人知的財産研究教育財団の登録商標です
■ 知的財産管理技能検定の詳細については、公式ウェブサイトをご覧ください■ 資格スクール・対策予備校のウェブサイトや書籍の情報も参考になります
1. 知的財産管理技能検定とは?
「知的財産管理技能検定」は、知的財産(知財)管理に特化した技能検定の一種で、国家試験に分類されます。知的財産を管理(マネジメント)するスキルの習得レベルを測定・評価するものです。
IoT、人工知能(AI)、ビッグデータなど技術革新の目覚ましい進展により、日々新たな技術が生まれ、みなさんのライフスタイルも大きく変化している現代において、ビジネスマンに求められるのは、人々の複雑で多様化する潜在的なニーズを掘り起こし、様々な情報やコンテンツ、ユーザー目線でのデザイン、関連する技術などを融合し、共感を呼ぶ新しい価値を創造し、ブランディングすることです。そのために、新たな技術をはじめ、コンテンツ・デザイン・ブランドといった「知的財産」をいかにマネジメントするかがビジネスの鍵となってきています。
現代のビジネスマンにとって必須ともいえる知的財産マネジメントに関する資格はどのようなものなのか、みていきましょう!
技能検定のひとつであり、国家資格!
知的財産管理技能検定は、もともとは知的財産教育協会が 2004年からはじめた民間資格「知的財産検定」が始まりでしたが、厚生労働省による技能検定の1つとして、2008年7月から国家資格として定められており、2024年現在で約50回近く開催されています。
技能検定とは、働く人が働くうえで身につける、または必要とされる技能の習得レベルを評価する国家検定制度で、知的財産管理技能検定は、厚生労働大臣より指定試験機関として指定を受けた「一般財団法人知的財産研究教育財団」の一部門である「知的財産教育協会」が試験業務を行っています。試験に合格することで等級に応じた「〇級知的財産管理技能士(〇〇業務)」を名乗ることができます。
1級から3級まで検定試験の等級はさまざま
検定試験は、1級から3級まで複数の等級が用意されています。1級は最も等級の高い検定試験で、特許専門業務・コンテンツ専門業務・ブランド専門業務などその専門性に応じて違いがあります。また、2級と3級は主に管理業務(マネジメント業務)に重きを置いている試験です。各試験の詳細は後述しますが、ご自身の知識・経験などにあわせて受検する等級を選択することができます。
累計受検者数は48万人超!
2024年6月現在において、第47回(2024年3月実施)まで実施されており、累計の受検者数は48万人を超えています。様々な企業の知的財産部の方だけでなく、学生の方の受検も多く、ご自身の知的財産に関する習得度合いの測定・評価を目的とするほか、人材育成の一環として活用している企業もあります。
資格取得のメリット
知的財産管理技能検定を取得することで、ご自身の知的財産マネジメント能力を公的に証明することができます。研究開発者・技術者、クリエイター、デザイナー、経営企画、販売営業等様々な職種の方々に必要なスキルを証明できます。
また、個人のスキルの証明になるだけでなく、組織の知財マネジメント能力の向上につながることも期待できます。知的財産部などの組織で知的財産管理技能検定を受検し、資格を取得することで、組織全体に知財を戦略的に活用する意識が高まり、ひいてはイノベーションの創出、競争力の強化につながるでしょう。
さらには知財を経営資源としてビジネスに活用するためには、知財マネジメント能力の高い人材が知的財産部などの専門部署にいるだけでは足りません。様々な部署の方の知財マネジメント能力の向上を通じて、専門的表現の多い知財の世界においても円滑なコミュニケーションが可能となるでしょう。
2. 等級別の試験概要
3級の検定試験は、知的財産管理技能検定の中でもっとも取り組みやすい等級で、合格することで三級知的財産管理技能士(管理業務)を名乗ることができます。知財マネジメントの初歩的なスキルが習得できているかを測定・評価する試験です。知的財産管理の初歩的な能力を身に着けた方として、企業の知的財産部や開発部などに配属されて1年目から3年目程度のいわゆる新人クラスの方々に適した試験と考えられます。
3級の検定試験は、学科試験と実技試験があり、受験資格に制限はなく、誰でも受検することができます。試験は年3回(3月、7月、11月)に実施されます。
試験方式は各々次のようになっています。
方式 | 問題数 | 時間 | |
学科 | マークシート(3肢択一) | 30問 | 45分 |
実技 | 記述 | 30問 | 45分 |
2級:二級知的財産管理技能士(管理業務)
2級の検定試験は、知的財産管理技能検定の真ん中に位置する等級で、合格することで二級知的財産管理技能士(管理業務)を名乗ることができます。知財マネジメントの基本的なスキルが習得できているかを測定・評価する試験です。知的財産管理の基本的な能力を身に着けた方として、企業の知的財産部や開発部などに配属されて3年目から5年目程度のいわゆる中堅クラスの方々に適した試験と考えられます。3級の検定試験がまさに入門編だったのに対して、2級の検定試験はさらに一歩踏み込んだ知識が求められます。
2級の検定試験にも学科試験と実技試験があり、実務経験は必ずしも必須ではありませんが、受検資格に一定の制限があります。
✔ 知的財産に関する業務について2年以上の実務経験を有する者✔ 3級技能検定の合格者✔ 学校教育法による大学又は大学院において検定職種に関する科目について10単位以上を習得した者✔ ビジネス著作権検定の合格者 |
2級の検定試験は年3回(3月、7月、11月)に実施されており、試験方式は次のようになっています。
方式 | 問題数 | 時間 | |
学科 | マークシート | 40問 | 60分 |
実技 | 記述・マークシート | 40問 | 60分 |
1級:一級知的財産管理技能士(〇〇専門業務)
1級の検定試験は、知的財産管理技能検定の中でももっとも等級の高い試験です。1級試験は「特許専門業務」、「コンテンツ専門業務」及び「ブランド専門業務」の3つに分かれており、合格することで一級知的財産管理技能士(〇〇専門業務;〇〇には受検した専門業務の種類が入ります)を名乗ることができます。
知的財産管理のスペシャリストでもある1級試験には、学科試験と実技試験があり、各々次のような受検資格の制限があります。学科試験はいずれも相応の実務経験がなければ受検することができず、実技試験はさらにその学科試験に合格していないと受検することができない試験となっています。
学科試験 | ・知的財産に関する業務について4年以上の実務経験を有する者 |
実技試験 | ・2級技能検定の合格者で、知的財産に関する業務について1年以上の実務経験を有する者 |
・3級技能検定の合格者で、知的財産に関する業務について2年以上の実務経験を有する者 | |
・ 学校教育法による大学又は大学院において検定職種に関する科目について10単位以上を習得した者で、知的財産に関する業務について1年以上の実務経験を有する者 | |
・ ビジネス著作権検定の合格者で、知的財産に関する業務について1年以上の実務経験を有する者 | |
実技試験 | ・1級技能検定の学科試験の合格者 |
・1級知的財産管理技能士(受検しようとする業務とは別業務) |
1級の検定試験は、各業務分野で年に1回ずつ実施されています。通常は3月、7月、11月の年3回のうち、各々以下の時期に受検することができます。
3月 | 7月 | 11月 | |
特許専門業務 | 実技 | 学科 | |
コンテンツ専門業務 | 学科 | 実技 | |
ブランド専門業務 | 学科 | 実技 |
また、試験形式は学科と実技で以下のようになっています。
方式 | 問題数 | 時間 | |
学科 | マークシート | 45問 | 100分 |
実技 | 記述・口頭試問 | 5問 | 約30分 |
3.合格率や勉強時間など
気になる等級別の合格率は?
気になる各等級の合格率ですが、おおむね次のようになっています。
3級(学科・実技) | 約70% |
2級(学科・実技) | 約40% |
1級(学科) | 約8% |
1級(実技) | 約70% |
3級の検定試験は国家試験の中でも高い合格率であり、比較的取り組みやすい検定試験といえます。次いで、2級の検定試験は3級の検定試験よりも、合格率が低くなっています。決して高くも低くもない中程度の難易度といえるでしょうか。
最後に、1級の検定試験ですが、学科試験の合格率は約8%と低く非常に難易度の高い試験になっています。一方で実技試験の合格率は約70%と高い割合ですが、これは非常に難易度の高い学科試験を突破した方のみが受検できる試験であることに注意が必要です。
合格に必要な勉強時間の目安
3級の検定試験に合格するために必要な勉強時間は、50~100時間といわれています。知的財産管理技能検定はビジネスマンが多く受検する資格ですので、働きながらしっかりと勉強時間を確保する必要があります。知的財産管理技能検定の中の入門編といっても油断は大敵です。
2級の検定試験に合格するために必要な勉強時間は、100時間前後といわれています。おそらく3級の検定試験を受検した方がステップアップとして受けることが多い2級の試験ですので、3級よりは長い勉強時間が必要な方もいるでしょう。
1級の検定試験はやはり難易度が大きく上がります。合格するために必要な勉強時間は、400時間以上といわれています。知財マネジメント能力のスペシャリストである1級ですから長期にわたってしっかりとしたタイムマネジメントの能力も問われます。また、2級や3級はおおよそ独学でも十分に学習できますが、1級では独学では難しい場合もあります。Webで受講できる通信講座や専門予備校に歌謡などで効率的に学習を進めていきましょう。
弁理士との違い
ここまで知的財産管理技能検定について様々なことを紹介してきました。ここで、知的財産に関するもう一つの国家資格である「弁理士」との違いに触れておきましょう。
弁理士は「知財に関する業務を代理で行うこと」が可能な国家資格で、独占業務にあたるため資格保有者以外は手続きができません。正確な手続きの知識・法律の知識が必要になります。対して、知的財産管理技能検定は、知財マネジメント能力の技能検定であるため、独占業務は存在しない点が最も弁理士と異なります。
また、弁理士は資格取得により独立開業をする方もいますが、知的財産管理技能検定は、例え1級の検定試験の合格者であっても独立開業をする方は厳しいと言わざるとえないでしょうか。
4.知財検定の最新トピックス
試験範囲が拡充されます(1級・2級)
2024年11月実施の第49回試験から、1級と2級の試験範囲が拡充されます。これは、2024年5月1日から経済安全保障推進法に基づいて、特許出願非公開制度が開始されることに伴った変更です。
より具体的には、1級の検定試験(学科試験・特許専門業務)の試験範囲に「経済安全保障推進法(第5章 特許出願の非公開制度)」が追加されます。また、2級の検定試験(学科試験)の試験範囲にも「経済安全保障推進法(第5章 特許出願の非公開制度)」が追加されます。
CBT方式の試験が導入されます(2級・3級)
2024年11月実施の第49回試験から、2級と3級の検定試験においてCBT(Computer Based Testing)が導入されます。これまではPBT(Paper Based Testing)であったため、試験問題が冊子で提供され、解答を解答用紙に記入して提出する必要があったため、都道府県によっては対応していない場所もありましたが、CBTの導入により試験問題はインターネットに接続された端末画面に表示して提供され、解答もインターネットに接続された端末画面に入力して提出することになります。これによって、一気に受検地の選択肢が増えることになります。なお、CBT方式になってもPBT方式と受検料や試験日程などは変更がありません。
5. まとめ
ビジネスマンに必須ともいえる知財マネジメント能力の検定試験である「知的財産管理技能検定」について様々な情報をみてきました。等級別に異なる試験方式で、受検資格に制限がある等級もありました。ご自身のステージに合わせて、ぜひ知的財産管理技能検定に挑戦し、ステップアップに役立ててください。
すでに知財業界でお仕事をされている方、異動などで新たに配属された方、これから知財業界で活躍してみたいと考えている学生の方、一人でも多くの方にこの記事の情報が参考になることを期待しています。