理想の知財キャリアを手に入れる 知財業界特化型求人サイト
TOP 知財のキャリア 知財の資格 知財の実務
転職を検討中の方へ

知財キャリアインタビュー③:岩崎さんの知財キャリア ~企業知財部で副業という選択肢~

パテキャリ編集部 編集長
知財キャリアインタビュー③:岩崎さんの知財キャリア ~企業知財部で副業という選択肢~

パテキャリ編集部(以下、編集部):

 本日はキャリアインタビューを快諾いただきありがとうございます。岩崎さんの知財キャリアや働き方についてお話を伺えればと思います。早速ですが、岩﨑さんの現在の働き方について教えていただけますでしょうか。

岩崎さん:

 こちらこそありがとうございます。

 私は、執筆させていただいる記事のプロフィールにも記載していますが、本業として某製薬会社の知的財産部門で働きつつ、兼業として(株)NATAコーポレーションでも知的財産の仕事をさせていただいております。本業の企業名はここでは伏せさせていただけると助かりますが、フルタイムで本業の業務を行いつつ、本業の終業後や休みの日の空いた時間に兼業先での業務を行っております。また、個人事業として総合知的財産事務所を開設しています。

編集部:

 製薬企業の知財部と、別の企業でも働いていらっしゃるうえ、ご自身事務所でも働かれているのですね。非常に多忙に活躍されていますね。本業の企業では、兼業・副業の働き方が認められているのでしょうか?

岩崎さん:

 はい、決して秘密にして働いているというわけではなく(笑)。

 本業先にも兼業の申請を行い、許可を得たうえで働いています。社員が保有する資格・知識を活用して兼業や副業といった社外での活動を認める制度が数年前に整備されました。他社からの業務委託等だけではなく、他社との雇用契約を締結することも一定の条件下で認めており、非常にありがたい制度ですね。自社の業務だけでは得られない経験等を積極的に社に還元してほしいという趣旨の制度だと思っています。私は弁理士ですので、「弁理士資格を活かせる機会かもしれない」と思い、会社の許可を得て活動しています。

編集部:

 それを聞いて安心しました(笑)。

 ではまず、本業のことをお伺いします。岩崎さんはどのようにして企業知財部のお仕事に興味を持たれたのでしょうか?

岩崎さん:

 元々は今とは別の製薬会社で研究者として勤務していました。製薬会社の知財部としてはおそらく大半の方が似た経歴ではないかと思いますが、研究業務の中で知財に触れる機会があり、そこから知財に興味を持ったのがきっかけです。

編集部:

 研究者というと特許の発明者になる方も多い印象です。岩崎さんも発明者として知財に触れる機会があったということでしょうか?

岩崎さん:

 発明者としては知財に触れたことは多くなく、特許調査がきっかけです。もともと好奇心が強い性格なので、知らないことを勉強したり、他社の考えを調べたりすることが好きで、科学論文もよく読んでいました。そこで特許調査の業務を一部任せてもらえることになり、はじめは記載内容が難解だと思いながらも自社の事業が関連する分野にいろんな特許技術があることを知り、すごく楽しんで読んでいたのを覚えています。

編集部:

 特許調査から知財の世界に興味を持たれたのですね。学生時代に知財に触れることはありましたか?

岩崎さん:

 ほとんど触れることはなかったと思います。大学院の先輩に弁理士試験の勉強をしている方がいらっしゃったのですが、その情報を聞いた時も、当時は知財に全く興味を示しませんでした。

編集部:

 研究者のキャリアから企業知財部のキャリアに変わるきっかけはどのようなものでしたか?

岩崎さん:

 当時の知財部門で産休に入られる先輩がいて、その間のピンチヒッターとして白羽の矢が立ったのが異動のきっかけです。異動前から知財部門の方とは接点があったので、将来の異動希望先のひとつに知的財産部門を挙げていたのも、異動理由だったのではないかと思います。

編集部:

 企業知財部ではどのようなお仕事をされていたのですか?

岩崎さん:

小さな知的財産部門でしたので、比較的色々やらせてもらえたと思います。代表的なものは、

  • 発明発掘(研究所・工場)
  • 出願明細書の作成/各種権利化対応
  • 社内の知財教育(研究所・工場・営業部門)
  • 特許調査(先行技術調査・クリアランス調査・技術動向調査)
  • 職務発明業務(発明報奨金算定・規定管理)

などでしょうか。

編集部:

 現在の本業先とは異なる企業と伺いましたが、現在の知財部でも似たお仕事をされていますか?

岩崎さん:

 いえ、似た部分もありますが、結構別のことも現在の勤め先では担当しています。重複しないこととしては、例えば、

  • 意匠/商標の調査、出願、権利化業務
  • 営業資材/製品包材に関する知財調査/審査
  • ライセンス条件交渉/契約書起案/知財関連契約の審査
  • 著作物管理/著作権相談対応
  • 一部のプレスリリース内容の審査

なども現在は行っています。

編集部:

 特許だけではなく、意匠・商標・著作権まで幅広く業務で活用する機会があるのですね。まさに知的財産の専門家として活躍されている印象を持ちました。

 企業知財部で働くうえで、弁理士資格を保有されていることは必須とお考えですか?

岩崎さん:

 特に必須ではないと思います。各社の方針にもよりますが、特許出願の明細書を社内で内製し、その代理を自社の社員が行う企業様であれば、弁理士資格は非常に重要です。ですが、私のいる会社では基本的に特許事務所に依頼するので、直接的に弁理士資格を用いて業務することはありません。

編集部:

 ということは、弁理士資格を持っていない業界未経験の方や特許事務所の技術者出身の方が企業知財部への転職を目指すということも可能性があるわけですね?

岩崎さん:

 可能性は大いにあると思っています。個人的には、企業知財部で弁理士資格を保有していることは、最低限の産業財産権法の知識がある客観的な保証になる程度、ととらえています。それよりは、特許分野であれば技術内容の理解力が要りますし、拒絶対応の際の主張を検討するために、論理的な思考力が重要です。また、社内外の様々な方とやり取りを行いますので、コミュニケーション力も非常に重要かと思います。

編集部:

 企業知財部への転職は狭き門と聞くこともありますので、資格が必須ではないという情報は朗報かもしれません。さて、では次に副業について教えてください。(株)NATAコーポレーションはどのような会社ですか?そこでの知財の業務はどのようなものがあるのでしょうか?

岩崎さん:

 NATAコーポレーションは、医薬品や医療機器に関して、非臨床試験・臨床試験の支援業務を行っている会社です。

 医薬品等は着想から世に出るまで10年以上を要するのが通常ですが、その間のんびりしているわけではなく、動物での試験(非臨床試験)やヒトでの試験(臨床試験、いわゆる治験)等で、開発品の安全性・有効性などを検証しています。NATAコーポレーションは、独自のフレンドリーCRO®ネットワークを用いて、そのような試験を行う際の専門機関の紹介・仲介や、試験の組み立て方・進め方のコンサルティング等を行っています。また、創薬ベンチャー企業に対して開発計画の策定支援や開発資金の調達のお手伝いもしています。

 必ずしも知財に関連する業務が多いわけではないのですが、クライアント様の保有する特許技術の有効性の鑑定、他社特許のクリアランス調査、商標調査などを行っています。加えて、特許出願や商標出願をご希望の場合は、クライアント様をNATAコーポレーションの提携事務所でもある私の個人事務所へつなぎ、特許庁への手続きは私の個人事務所で代理させていただいております。 

編集部:

 副業先での業務だけではなく、ご自身の事務所とも連携して活躍されているのですね。副業先での業務内容は知財にとどまらず、幅広く難しそうという印象です。やはり本業先でのご経験が活かされる働き方ということでしょうか。

岩崎さん:

 そうですね。企業知財部では製品や開発品の誕生前の構想の段階から終売まで長い目で様々な観点から触れる機会があります。ここは特許事務所とは大きく異なる点ですね。製品開発の全体を俯瞰できるので、その経験が副業先でのクライアント様、特にベンチャー企業のクライアント様への提言等に役立てていると考えています。

編集部:

 ありがとうございます。企業知財部で働きつつ、副業・兼業することのメリット・デメリットを教えてください。また副業が向いている方はどのような方だと思いますか。

岩崎さん:

 副業の一番のメリットは、ご所属の企業の業務だけでは得られない経験や人脈形成につながること、様々な立場からの視点を経験でき、ご自身の知識・経験をフル活用できることだと思います。一方で、デメリットもやはりありまして、端的には私のようにフルタイムで本業先にお勤めの場合、単純に働く時間が増えてしまうことですね(笑)。健康管理の面でもご自身を律することができる方が向いていると思います。あとは、相手に知財制度のことを説明したり、一緒になって開発計画に頭をひねったりする思考がお好きな方でしたら、副業も向いているのではないかと思います。 

 ただ、ご所属の企業様での就業規則等をご確認いただき、副業が許される環境なのかどうかはよく確認されてください。そのうえで、本業先の業務範囲とコンフリクトなく、情報もコンタミネーションさせないという様々な前提をクリアすることが必要になりますが、もし諸々の状況が許されるのでしたら、いろんな場で活躍できる機会を模索してみるのもよいのではないでしょうか。

編集部:

 では最後に、一言お願いします。

岩崎さん:

 私の知財経験は製薬分野のみですので、もしかしたらその他の技術分野では全く異なるかもしれませんが、多くの企業知財部には非常に経験豊富な方が多い一方で、そのご経験等が直接社会全体に還元されるのは、その方の定年退職間際だったり退職後だったりします。そのようなセカンドキャリアの働き方も決して否定はしませんが、年齢や体力が許すうちにしかできないこともあると思っています。副業・兼業を通じて、他の企業や他の立場での視点を身に着け、自身の働く技術分野での事業や知財活動を盛り上げられたらいいなと思います。

編集部:

 本日は貴重なお話をありがとうございました。

パテキャリ編集部 編集長 パテキャリ編集部は、弁理士など知財実務関係者のみで構成されているチームです。
転職・副業をご希望の方
知財業界のあなたに ぴったりの求人が見つかる パテキャリ
求人サイトを見る
メディアの新着情報がもっと欲しい方
知財に関する最新の ノウハウ情報を メルマガでお届け中
メルマガ登録